東洋経済で特集されていたので興味のある人はどうぞ。
週刊 東洋経済 2012年 11/24号 [雑誌]
ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収の記事を集めて見ました。
改めて見ると、大きな挑戦であることは間違いない。
記事によると
- ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収について
- 買収総額201億ドル (約1兆5700億円)
- スプリントが発行する転換社債を31億ドルで引き受ける
- スプリントに170億ドル出資
- スプリントの株主総会と米規制当局の承認後
- 総額201億ドルの使用使途
- 約121億ドルをスプリントの株主に支払い
- スプリントの既存株主は7.3ドルの現金もしくは新スプリント株を受け取る権利がある
- 約80億ドルを財務体質強化などに充てる
- スプリントの転換社債を31億ドルで引き受ける
- 同じ価格で新株を50億ドル分購入
- スプリント株70%取得予定
- ソフトバンクは米国で受け皿となる新会社を設立、その子会社として新スプリントを設立
- スプリントはニューヨーク証券取引所に上場したまま
- アメリカ証券市場で資金を調達したり、アメリカの銀行から借り入れするときに有利にする為
- 日本から何回もおカネが行くのは銀行団が不安になる
- 上場維持するほうが、アメリカ政府や一般投資家、ユーザーからしても安心
- アメリカ規制当局が華為技術とZTEの関係を問題とする可能性がある
- 買収計画は恐らく承認される
- ソフトバンクの設備投資の約10%が、華為技術とZTEの機器購入に充てられている (Bloomberg調べ)
- 「米政府がするなと決めれば、それに従う」 (孫社長)
- 買収は2013年半ばに完了予定
- 自己都合で買収合意を破棄した場合、最大6億ドルの違約金 (SEC文書より)
- スプリントが他の買収案を受け入れる場合
- ソフトバンクが資金を調達できなかった場合
- スプリント・ネクステルはアメリカで3位の携帯電話会社
- 連結売上高810億ドル、契約数9600万件
- 米国での市場シェアは16%
- ベライゾン・ワイヤレス:32%
- AT&Tワイヤレス:30%
- プリペイド式携帯電話ではアメリカ2位
- 買収でソフトバンクは売上高で携帯電話会社世界3位になる
- 1位:チャイナモバイル (中国)
- 2位:ベライゾン・ワイヤレス (アメリカ)
- ソフトバンクグループは計6兆3000億円になる
- 買収でソフトバンクグループの契約数はアメリカ大手と並ぶ
- ベライゾン:1億1100万件
- AT&T:1億0500万件
- ソフトバンクグループ:9600万件 (内スプリントは5600万件、2012年6月末時点)
- スプリント社に照準を合わせたのは数カ月前 (孫社長)
- ボーダフォン日本法人を買収すると決めた6年前から、日本でのわれわれの経営状況が十分によくなったら、いずれは世界展開により、ドコモを抜いて世界規模の会社になると考えていた
- 買収後の経営体制
- CEOは現ダン・ヘッセCEO
- 孫社長とダン・ヘッセCEOが知り合いになったのは10年前
- ヘッセ氏は商用レーザー通信会社テラビーム・ネットワークスを経営しており、孫氏は同社に出資していた
- 孫社長は会長
- 取締役会は10人中、スプリントはCEOを含めて4人の予定
- 資金調達について
- ソフトバンクの増資は行わない
- 手元資金と借入金で行う
- 手元資金7000億円と1兆5000億円を超える銀行からのつなぎ融資を利用
- 携帯電話事業のEBITDAはこの4年間、年平均15%増加
- EBITDAに対する純有利子負債の比率は2.7倍
- 2006年の英ボーダフォン日本法人買収時は5.6倍
- 銀行団について
- 実質10日間で銀行から融資を取り付けた (孫社長)
- 融資銀行
- 主力銀行のみずほコーポレート銀行
- 三井住友銀行
- 三菱東京UFJ銀行ドイツ銀行東京支店
- 「ボーダフォンの際の借入金利は4%だったが、今回は1.数%だった」 (孫社長)
- メリット
- スプリント傘下の高速通信業者クリアワイヤ社が保有する周波数を手に入れられる可能性がある (クレディ・スイス証券アナリスト 早川仁氏)
- スプリントはクリアワイヤに約48%出資
- クリヤワイヤは、創業時にスプリントから支援を受けている
- クリアワイヤの企業価値は、手元現金と債務を含めて43億ドル
- クリアワイヤの周波数を使用すれば、大手に対抗するアドバンテージになる
- ほとんどの市場で100MHzを優に超える周波数を持っている
- その一部は、もともとスプリントが所有していたもの
- 他の株主から株式を取得し、議決権ベースで48.1%から50.4%に引き上げる (10月18日)
- クリアワイヤの他の株主から同社の株式を約1億ドルで買い取る (SEC資料より)
- 日米で基地局など同じ通信機器を使用しているのでスケールメリットが見込める
(クレディ・スイス証券アナリスト 早川仁氏) - スプリントはソフトバンクが低利で借り入れた資金を活用できるようになり、金利コストが軽減する
- ソフトバンクがボーダフォンを立て直したようにスプリントを立て直せるかも知れない
- 米国の一部地域では、モバイルブロードバンドはまだ成長の初期段階にあるため、ビジネスチャンスは非常に大きい
(マッコーリー証券の通信アナリスト、ネイサン・ラムラー氏) - アメリカのモバイル通信速度は日本の半分ほど
- ソフトバンクのモバイルブロードバンド技術は最新の通信網を整備中のスプリントにメリット
- クリアワイヤが2013年の開始に向けて建設するLTEは、ソフトバンクが普及を目指す「TD-LTE」と呼ばれる方式
- iPhoneは「FD-LTE」方式
- ソフトバンクも日本では「FD-LTE」方式でiPhoneのサービスを行っている
- アップルが「TD-LTE」方式のiPhoneを出すとソフトバンクグループが圧倒的に有利な立場に立つ
- 「Softbank 4G」のAXGP方式の通信サービスは、TD-LTE互換
- アメリカは1契約当たりの1ヶ月平均収入(ARPU)が高い (孫社長)
- スマホ端末やネットワーク機器の調達力が高まる
- ソフトバンクモバイルとスプリント・ネクステルはいずれもエリクソン製の通信設備を採用
- 自社ネットワーク向けスマートフォンの製造を呼びかけやすくなる
- 端末価格を抑えられる
- スプリントの利益成長はソフトバンクの連結業績に寄与するだけでなく、資産価値としての評価が高まる
- 多彩な料金プランやサービスで新規顧客を発掘できるかもしれない
- アメリカのデータ・プランは、単純に通信量に応じて月額料金を請求するものがほとんど
- 的を絞ったプランを用意すれば、「汎用的なプランに毎月30ドルを支払いたくない」という理由でモバイル・データ・サービスをまだ使っていない消費者を引きつけることができる可能性がある
- 大手キャリアの携帯電話向けTVサービスは、料金が高く、コンテンツの選択肢が限られている
- アメリカのキャリアは付加価値サービスに関して
(J. Gold Associatesアナリスト ジャック・ゴールド氏) - 力を入れていない
- 開発力が低い
- 魅力的な価格を設定していない
- デメリット
- 多額の借入金でソフトバンクの信用力が悪化する
- 有利子負債が3.9兆円になる
- ソフトバンクの有利子負債は約7944億円 (2012年6月末)
- 今回の買収関連の話題により、ソフトバンクの時価総額は2日間で1兆円減った
- スプリントの収益やキャッシュフローが実際に改善できるか不透明
(BNPパリバ証券チーフクレジットアナリスト 中空麻奈氏) - 日本市場の状態が悪化し、ソフトバンクが注意や資金を日本での事業に向けざるを得なくなった場合は、スプリントの顧客も影響を受けることになる可能性がある (WIRED)
- 世界の携帯事業への外資参入は撤退が多い
- ボーダフォンは、ここ数年は出資先の見極めを優先し、一部の国から撤退する動きを見せてきた
- スペインのテレフォニカはチャイナユニコム(中国聯通)からの出資引き揚げに動いた
- アラブ首長国連邦のエティサラートはインド市場から撤退
- 撤退意向を見せるノルウェーのテレノールなど
- アナリストの評価
- クレディ・スイス証券アナリスト 早川仁氏
- スプリント傘下、クリアワイヤの周波数を入手できる点を評価
- 買収金額は妥当
- 同じチャンスは2度と巡って来ない
- 今期から来期にかけてスプリントの高速通信関連の設備投資がピークを迎える為
- SMBC日興証券シニアアナリスト 森行真司氏
- 買収金額は割高とはいえない
- 市場実勢に若干の上乗せをした価格にとどまるため
- スプリントは業績はすでに底入れして改善傾向
- 両社のニーズとシーズが一致した買収
- スプリントはLTE通信網の立ち上げなど設備投資に必要な資金が不足するという問題に直面している
- ソフトバンクは5000億円前後のフリーキャッシュフローの黒字がある
- BNPパリバ証券チーフクレジットアナリスト 中空麻奈氏
- 多額の借り入れでシングルA格を保てるかが問題
- 買収金額は割り高
- スプリントの収益が改善できるか不透明
- NTTドコモが失敗したような少額出資でない点は評価
- ゴールドマン・サックス証券アナリスト 松橋郁夫氏
- シナジーが実現するまでには数年かかる
- SMBCフレンド証券投資情報部 中西文行部長
- 投資家も孫社長が正しい決断をしていると後で気づくだろう
- ある外資系証券アナリスト
- 「スプリントはすでに自ら業績回復している」(孫社長)ので「純投資の性格が強い買収」と思われる
- 情報通信総合研究所 岸田重行・主任研究員 (NTTグループ)
- スプリントの既存の戦略を加速させるもので、戦略を変えるものではない。今のところ米国の上位2社を追いかける決定打は見えない
- アナリストら (WSJ)
- 携帯電話会社同士の合併で得られる主要なシナジーは、無線ネットワークの統合
- 端末や通信機器の調達のコストや効率が向上することではない
- WSJコラム Holman W. Jenkins, Jr.
- 説得力のある相乗効果が見当たらない
- スプリントがホワイトナイトを必要としていた
- AT&TとTモバイルの合併に抗議するロビー活動を積極的に行った
- 自らがAT&Tかベライゾン・ワイヤレスに買収される可能性を断ち切ってしまった
- 十分な収益は上げられないのでは
- スマートフォンユーザーの18%はWi-Fiだけに依存し、データプランの料金を支払っていない
- スマートフォンはそれを販売した携帯事業会社のビジネスモデルを破壊しかねない危険な機器
- ある調査では回答者の半数近くが、携帯電話会社の通話やメール通信の料金がかからないように、オーバーザトップ(OTT)アプリを使っていた
- スプリント・ネクステルについて
- スプリントはアメリカ5位のメトロPCSコミュニケーションズに対して買収案の提示を検討している
- 2012年10月3日業界4位のTモバイルUSAがメトロPCSコミュニケーションズとの合併を発表
- スプリントが統合コストをかけてまでシェア拡大のためにメトロを買収するメリットは薄そう (REUTERS)
- ソフトバンクはメトロPCSコミュニケーションズ買収の準備も進めている (10月19日)
- 2004年12月スプリントがネクステルを買収して、2社で異なる通信方式の統合コストがかさんで赤字を継続 (ダン・ヘッセCEO)
- 2社のネットワーク移行や大型設備投資に目途がつきつつあり、2014年以降に業績拡大が見込まれる (ダン・ヘッセCEO)
- 2008年頃には四半期あたり100万超のペースで契約者が離れていた
- 現在、四半期あたり100万を超える加入者を獲得するまでに回復
- iPhoneの取扱いは大手2社に出遅れた
- 2011年10月から「4S」の販売を開始
- 2012年7月からはLTE網の整備を本格化
- 最新の4Gスマートフォンを所有するスプリントの顧客の大半は、低速な3Gネットワークを今でも利用しなければならない
- 2012年第2四半期末時点で長期債務、ファイナンシングおよびキャピタル・リース債務が総額210億ドル近くに達している
- 「Network Vision」という新しい柔軟なインフラの構築を急いでいる
- LTEネットワーク整備
- 3Gネットワークの強化
- 老朽化した「iDEN」ネットワークの段階的廃止など
- LTEサービス用に5MHzの2つのペア・ブロックしか持っていない
- AT&Tやベライゾンがほとんどの市場で持っているものの半分にすぎない
- スプリントとクリアワイヤが合併を経て、キャリア・アグリゲーションという新しいLTE技術を使って、周波数帯の異なるそれぞれのネットワークの周波数をバンドルし、1つの高キャパシティ・システムを構築すると考えている
(Recon Analyticsアナリスト ロジャー・エントナー氏) - アメリカでiPhoneと無制限プランの組み合わせを提供する通信キャリアはスプリントのみ
- アメリカで無制限データプランを行っているのはスプリント、T-Mobile、MetroPCS
- iPhoneを提供しているAT&TとVerizon Wirelessはいずれも新規顧客を対象にデータプランに上限を設けている
この買収は元々、世界への進出を考えていたところにちょうど良いタイミングでスプリントという会社が在り、またCEOも顔見知りだったことから、うまく交渉がまとめられたようです。
また、銀行団が早い段階で資金調達の目途を立てた事も大きい。
銀行も投資先が少ない中、渡りに船だったのかもしれない。
金利の低さからもそれがうかがえる。
買収の成否は、スプリントに売りとなる特徴を出せるかにかかっていると思われます。
それが安価な料金プランなのかそれとも通信速度なのか、特別なiPhoneなのかそれとも新しいサービスなのかはわかりません。
ソフトバンクのことだから、ベストバイやウォルマートなど流通業に対してインセンティブ与え積極的に販売させ、また派手なCM展開をする事は間違いないと思われます。
記事
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