(更新)WSJの記事にこの件について研究者へのQAがあったので更新しました。
HIVに母子感染した子供が治療でウィルスが検出されなくなったそうです。
記事によると
- HIV母子感染女児が出生直後から一般的な抗ウイルス薬を投与し、治癒
- 研究機関
- ジョンズ・ホプキンス大学小児センター Deborah Persaud氏ら
- 経緯
- 2010年7月母親は出産前にHIVの陽性反応が確認されていた
- 医師は子どもの感染リスクが高いと判断
- 出生から30時間後には女児に抗レトロウイルス療法(ART)が開始
- 素早い集中的な治療が感染治癒につながった可能性が高い
- 通常は低用量で治療を始め、試験結果が出るのを待つ
- 試験結果が出るには4-6週間かかる
- 出生から48時間後には女児のHIV感染が確認
- 出生から29日後、継続治療でウィルスは検出されなくなった
- 1歳半まで治療は続けられた
- 親子は診察に来なくなった
- 10ヶ月後に血液検査を実施したところ、ウイルスは検出されなかった
- 医者は再びウイルスが検出されると思っていた
- 免疫細胞の中のHIVが潜んでいる場所で、治療中は影を潜め、治療が中止されたときに再び活性化できる準備をしている (ウイルス貯蔵所(virus reservoir))
- 早期の治療が貯蔵所の形成を防いだ可能性が高い
- 貯蔵所はHIVにさらされてからすぐに形成される場合が多い
- 疑問点
- 乳児が本当に感染していたのかと疑問
- しかし、出産直後の検査でウイルスが検出されている
- 感染しつつあった細胞は、長く居残る貯蔵所になるようなタイプではなかったのではないか
- その他
- 投与したのは一般的な抗ウイルス薬
- 新生児のHIV感染で「機能的な治癒」と呼ばれる状態に達した初めてのケース
- 感染の治癒の報告があったのはこの幼児で2例目
- 1例目はティモシー・ブラウンさんという男性(ABCNews)
- 成人になってから白血病の治療のために受けた骨髄移植の結果、感染が治癒
- 今回の治療が他の患者にも有効かは今後の研究待ち
- 今後の計画
- ジョンズ・ホプキンス大学小児センターでより多くの乳児を対象にごく初期に集中的な治療を試すさらなる研究が計画
- 治癒したとみられる乳児のHIVをめぐる状態についても監視を継続
研究チームは未だどれだけの量を投入すればよいかその方法は確立しておらず、赤ちゃんに抗レトロウィルス療法を施すのは高リスクという事らしい。
また、母親がHIV感染者でも母子感染を98%防ぐ方法を確立しているらしい。
母子感染する子供の多くは発展途上国で、おそらく母子感染を防ぐ出産やHIV検査体制が整っていないのだろう。
これらの子供がHIVの発症を防ぐ薬を継続的に服用するお金がない為、発症してしまう。
出産直後に治療すれば、治るのであれば、HIV検査体制と初期の費用だけですむ。
HIVも将来、完治できる病気になるかもしれない。
(2014年7月12日追記)
7月10日女児が再びHIVに感染している事を確認。
- 経緯
- 女児は4歳に成長
- 定期健診で、血中に検知可能なレベルのHIVが検出
- T細胞数の減少
- HIV抗体の出現が確認
- 体がウイルスと闘っている
- HIVが体内で再び活発に増殖している
- 抗レトロウイルス薬による治療を再開
どうやら完全にウィルスを除去する事ができなかったようです。
生き残ったウィルスが薬に対して抗体を持っている可能性もあるので追加の報告を待ちたいです。
記事
HIV感染の新生児が治癒、出生後にウイルス薬投与=米研究者 REUTERS
HIV感染乳児の治癒に関する質疑応答 WSJ
「HIV治癒」の米女児、感染を再び確認 Yahoo!ニュース
参照ページ
Researchers Describe First 'Functional HIV Cure' in an Infant Johns Hopkins Children's Center
'Berlin Patient' Timothy Brown Says He Is Still HIV-Free ABCNews
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